土地の価値を最大化する設計。

家の価値は「外回り」で決まる

マイホーム計画、順調に進んでいますか? もしかすると、毎週の打ち合わせ、膨らむ見積もり、決めることの連続で、少しお疲れではないでしょうか。「建物本体や内装へのこだわりで予算がいっぱい」「庭や駐車場の計画まで考える余裕がない」もし今そう思われているとしても、それはとても自然なことです。

多くの「家を建てた先輩たち」も、真剣であればあるほどその悩みに直面してきました。だからこそ、「庭や駐車場は建物が完成してから、お金が貯まったら考えよう」という選択をしたくなる気持ち、痛いほど分かります。

しかし、一人のプロとして、あなたの味方としてこれだけはお伝えさせてください。「あとでゆっくり」という選択が、実は将来的に「余計な出費」と「後悔」を生んでしまう可能性が高いのです。ここでお伝えしたいのは、「今すぐ高い庭を作ってください」ということではありません。「計画」と「準備」だけは先に済ませておかないと、後で損をしてしまうという事実です。

この記事では、なぜ最高の家には『建物の設計図』だけでなく『土地の設計図(外回りの計画)』もセットで必要なのか。予算を抑えつつ、将来の選択肢を守る方法をお話しします。

 

1|住み心地は配置と配管

家づくり終盤、予算調整は本当に精神をすり減らす作業です。そんな時、家の外回りを「ただの飾り」と考えてカットしたくなるのは無理もありません。しかし、庭や駐車場は単なる飾りではなく、暮らしを支える「生活の基盤」です。

想像してみてください。雨の日、買い物袋を持って車から降りたとき、濡れずに玄関まで移動できるルートはあるか? 泥だらけで帰ってきたお子様の靴を洗う場所や、将来の電気自動車のための充電設備はあるか? 特に重要なのが、地面の下にある「配管」です。例えば、住み始めてから「やっぱり駐車スペースに電気自動車の充電器や水道が欲しい」と思ったとしましょう。最初から計画して「空のパイプ」だけでも埋めておけば数万円で済んだ工事が、後からだと、綺麗な壁に穴を開け、固めたコンクリートを壊して掘り返し……当初の何倍もの費用がかかる大工事になってしまうのです。

仕上げの工事は後回しでも構いません。しかし、「見えない設備」だけは最初に計画しておく。それだけで、将来のあなたの財布への負担が劇的に軽くなります。

 

2|後回しが高くつく理由

「お金が貯まってからゆっくりやろう」。その堅実な考え方は素晴らしいです。しかし、ここで重要なのが「全体計画なき後回し」は危険だということです。全体像(ゴール)を決めずに「とりあえず車を停めるために、前面を全てコンクリートにする」とやってしまうとどうなるでしょう?

 数年後に「ここに記念の木を植えたい」「目隠しのフェンスを立てたい」と思った時、せっかく打ったコンクリートを解体する費用が発生します。これを「無駄な出費」と言います。

一番賢い方法は、「土地全体の計画図」を今のうちに完成させ、工事は予算に合わせて第一回、第二回……と分けて進めることです。これなら、将来必要な部分(木を植えるスペースや柱を立てる場所)を土のまま残しておくことができ、無駄な解体費を防げます。また、外回りの工事費を住宅ローンにまとめることで、金利メリットを受けられる点も見逃せません。

 

3|庭で決まる省エネ効果

高性能な断熱材や窓を選んだあなたなら、「夏涼しく、冬暖かい家」への憧れも強いはずです。実は、その性能をフル活用できるかどうかは、「窓の外」にもかかっています。例えば、真夏。南や西の窓の外が一面コンクリートだと、強烈な照り返し熱が室内に入り込み、家全体の温度を上げてしまいます。

これを防ぐために、窓の前だけは照り返しの少ない素材を選んだり、将来的に「日よけ」を取り付けるための金具を外壁に設置しておく。あるいは、冬には葉が落ちる木を植えるスペースを確保しておく。これだけで、エアコンの効きが変わり、省エネに貢献します。家の断熱性能を無駄にしないためにも、「外の環境」を味方につける計画が必要なのです。

 

4|家を長持ちさせる設計

外回りの工事には、もう一つ重要な役割があります。それは、あなたの愛する家を守ることです。特に大切なのが「雨水の処理」です。地面に適切な傾きや排水の計画がないと、雨水が建物の基礎周りに溜まり続け、湿気でコンクリートを傷めたり、シロアリが好むジメジメした環境を作ってしまいます。

また、最初から計画された玄関までの通路や植物がある家は、年月が経っても「古びた家」ではなく「味わいのある家」として美しさを増していきます。それは将来的な資産価値の維持にも寄与しますが、何より「この家を大切にしたい」というご家族の愛着を育ててくれます。庭や駐車場は、家族を守る家そのものを、長く健康に保つための「ガード役」なのです。

 

5|ふんわりした想いでOK

ここまで読んで、「大事なのは分かったけど、やっぱり詳細を決める余裕も予算もイメージも湧かない……」と思われたかもしれません。安心してください。今、完璧に決める必要も、今すべてのお金を払う必要もありません。大切なのは、「将来どうなりたいか」という予備の線を引いておくことです。

「家」と「庭」と書いて「家庭」と読むように、建物と庭は切っても切り離せない関係です。だからこそ、最初の相談の段階で、こう伝えてみてください。「今は予算がないけれど、将来はこんな暮らしがしたいんです」

・週末は友人を呼んでBBQがしたい

・いつか子供と一緒に花を育てたい

・将来、電気自動車に乗るかもしれない

そんな「ふんわりとした想い」で十分です。その想いさえあれば、「ここは将来のために土のまま残しておきましょう」「配管だけはここに通しておきましょう」といった、無駄なく未来につなぐ『土地の設計図』を描くことができます。

家づくりの疲れ、予算の悩み、一人で抱え込まないでください。「お金がないから考えない」ではなく、「お金を有効に使うために計画だけはしておく」。10年後、20年後も「この家でよかった」と心から思える暮らしを、つくっていきましょう。

建築工房『akitsu・秋津』

美は、日々の営みの中に。

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