2026.04.17 19:00庇が創る、光と影の物語。庇(ひさし)が紡ぐ、パッシブデザインの極致日本の建築を見上げたとき、そこにはいつも「庇」がありました。それは単に雨を凌ぐための板ではありません。太陽の動きを読み、風を誘い、家の中に「心地よい影」を落とす。日本人が何百年もかけて磨き上げてきた、生活の知恵の結晶です。現代の合理化された家づくりでは、軒や庇のない「箱型」の家が増えています。しかし、エネルギー価格が高騰し、夏の猛暑が厳しさを増す今こそ、こ...
2026.04.12 19:00太陽を、家族の味方にする。光と熱をデザインし、エネルギーを自給する豊かな暮らし朝、カーテンを開けた瞬間に差し込む光。その温もりに触れるだけで、私たちの心と体は自然と健やかなリズムを刻み始めます。しかし、設計士として30年、数多くの住まいと向き合ってきた中で、改めて実感していることがあります。それは、太陽は単に「部屋を明るくするもの」だけではない、ということです。太陽は、家全体を温める「天然の暖房機」であり、家族の暮らしを支...
2026.04.11 19:00数字は溶け、暮らしの価値は深まる負債の数字は溶け、土地と暮らしの価値は深まる。一人の建築士が考える「真っ当な器」の選び方先日、アトリエの書棚の奥で眠っていた、学生時代の古い建築書を開いたときのこと。栞代わりに挟まれていた一枚のレシートが、ふと床に落ちました。印字はすっかり薄れていましたが、目を凝らすと、そこには30年以上前に行きつけだった喫茶店のコーヒー代が記されていました。その金額のあまりのささやかさに私は少し驚き、長い時間を...
2026.04.10 19:00健康を育む、もうひとつの皮膚。チセの知恵と現代技術が、心と体を整える住まいは単なる「箱」ではなく、私たちの心と体を包み込む「もうひとつの皮膚」のような存在だと私は考えています。ストレスや冷え、不自然な空気。現代の私たちが抱える健康への不安を、住まいのあり方を変えることで、少しずつ解きほぐすことはできないだろうか。そんな問いの答えを探して辿りついたのが、北海道の先住民、アイヌの方々が守り継いできた「チセ」という住まいの知恵でした...
2026.04.06 19:00温度の先にある心地よさ。湿度と表面温度が導く、身体が喜ぶ住まいの質「室温は20度あるのに、なぜか足元が冷える」「エアコンは効いているはずなのに、肌がじりじりと熱い」そんな違和感を覚えたことはありませんか。実は、住まいの心地よさは「温度計の数字」だけでは語り尽くせません。私たちの身体が本当に「快適だ」と感じる鍵は、空気の温度に加えて「湿度」、そして壁や床の「表面温度」のバランスにあります。30年、設計士として現場に立ち続け...
2026.04.05 19:00平屋の理想、心を救う庭の設え。ワンフロアでつながる安心と、心を救う「庭」の設え「階段のない、穏やかな暮らし」。老後まで見据えた住まいを考えるとき、平屋は多くの人にとって一つの憧れです。すべての生活が地続きでつながる安心感は、何物にも代えがたい魅力があります。しかし、設計士として30年、多くの住まいと向き合ってきた私の経験からお伝えしたいのは、平屋には「知っておくべき現実」も存在するということです。流行やイメージだけで選ぶのでは...
2026.04.03 19:00風が巡り、光が踊る住まい。自然光が描く陰影と、季節の風が巡る家住まいの表情を最も雄弁に語るもの。それは「窓」ではないでしょうか。窓は、単に外を眺めるための道具ではありません。それは、太陽の光を優しく迎え入れ、季節の風を招き、刻々と変わる自然の移ろいを家の中に映し出す「美しい額縁」のような存在です。窓の位置一つ、サイズ一つで、暮らしの温度は劇的に変わります。朝の光に包まれて清々しく目覚め、夕暮れの柔らかな陰影の中で静かに一日...
2026.04.02 19:00お湯に委ねて、心身を解き放つ。お湯に身を委ねて心身を解く温泉やサウナに身を置くとき、私たちが感じているのは単なるリラクゼーション以上の何かではないでしょうか。それは、日々の役割や忙しさから自分を解き放ち、無防備な一人の人間に戻るための儀式のようなもの。古くからこの国の人々は、お湯や水に触れることで、体だけでなく心までをも「洗い流し、再生させる」知恵を育んできました。現代という慌ただしい時代だからこそ、改めて見つめ直したい「整え...
2026.04.01 19:00古くなるほど、愛おしい。古くなるほど愛おしい。時間を味方にする生き方。新品のときが一番美しく、あとはただ古びていくだけ。そんな「消耗品」のような価値観に囲まれて、私たちはどこか息苦しさを感じてはいないでしょうか。家具、デニム、車、バイク、そして家。世の中には、歳月を重ねるほどに代えがたい価値を宿していくものがあります。それらに共通しているのは、単なる頑丈さではありません。傷つくことを受け入れ、手入れという名の愛情を注ぎ続...
2026.03.31 19:00「自分で選んだ道」が鎖になる「自分で選んだ設計(みち)」という思いが、あなたを縛り付ける鎖になってはいませんか家づくりにおいて、着工が目前に迫る時期。それは本来、理想が形になる高揚感で満たされるはずの時です。けれど、図面の細部が確定し、生活のリアリティが増してくるほどに、「どこかで本質がすり替わってしまったのではないか」という、残酷なまでの違和感に襲われることがあります。最初は営業担当者と夢を語り、キラキラとした未来だけを見...
2026.03.30 19:00柔らかく温かい、繭のような安らぎを。一歩踏み入れれば、そこは繭の中ふとした瞬間に、「あぁ、帰ってきた」と心の底から深く息をつける場所。人が住まいに本当に求めているものは、きらびやかな装飾や目新しい設備ではなく、もっと深い場所にある「根源的な心地よさ」ではないでしょうか。それは、まるで柔らかな繭(まゆ)の中にそっと守られているような、温かくて清々しい感覚。一歩足を踏み入れれば、そこには心を急かすような硬いものは何一つなく、ただ穏やかな...
2026.03.27 19:0030年後、その家は宝かゴミか。革製品やデニムのように、時を味方につける住まいの選び方お気に入りの革財布が手に馴染み、深い飴色へと育っていく悦び。穿き込むほどに自分の形に馴染み、唯一無二の表情を見せるデニム。私たちが、時と共に価値を増す「本物」に惹かれるのは、そこに「時間の積み重ね」という美しさが宿るからではないでしょうか。しかし、人生で最も長く身を置く「家」はどうでしょうか。大手メーカーのカタログに並ぶ工業製品の家は、完成した...