窓枠が創る、暮らしの表情。
木製サッシが運んでくる、本当の安らぎ
住まいの表情を形づくるもの。それは窓そのものだけでなく、それを支える「窓枠(わく)」にあるのかもしれません。
以前の私は、効率よく性能を高められる「樹脂(じゅし)サッシ」を基本にしていました。しかし、設計士として30年、多くの家と向き合う中で、最近は「木製サッシ」を標準として選ぶようになりました。
なぜ、手間がかかると言われる木製をあえて選ぶのか。そこには、数字だけでは測れない、心から「心地よい」と感じる暮らしへの、静かな想いがあります。
1│数字の先にある「温もり」
私が設計で大切にしている、高い断熱性能。UA値0.26という数字を守るために、窓の役割はとても重要です。現代の主流である樹脂サッシも優れていますが、木はそれ自体が空気を抱え込んだ「天然の守り手」です。
木製サッシがもたらす温かさは、単に「寒くない」だけではありません。凍てつく冬の朝、窓辺に寄ったときに感じる「ヒヤッ」とした空気の動きが、木製サッシに変えるだけで驚くほど和らぎます。窓枠にそっと手を触れてみると、そこには冷たさではなく、生きている素材ならではの柔らかな温もりが宿っています。この「触れた時の安心感」が、暮らしの温度をふわりと引き上げてくれるような気がしています。
2│素材と響き合う、美しい景色
私の家づくりに欠かせない、茨城の山溝杉(やまぞうすぎ)の床や、職人が丁寧に塗り上げる漆喰(しっくい)の壁。こうした自然の素材に囲まれた場所で、窓枠だけが工場で作られた製品であることに、私はずっと小さな違和感を持っていました。
窓枠を木にすることで、住まいは一つの「繭(まゆ)」のような調和を見せます。室内と同じ木の質感が、外の景色を優しく縁(ふち)取る。すると、いつもの庭がより鮮やかに、まるで一幅の絵画のように美しく目に飛び込んできます。本物の素材同士が響き合う空間は、そこに身を置くだけで、住む人の心を静かに整えてくれるのではないでしょうか。
3│「手間」を「愛着」に変える楽しみ
「木製は手入れが大変そう」と感じる方も多いと思います。確かに、数年に一度、色を塗り直すといったお手入れは必要です。しかし、それは「手間」というよりも、家を可愛がるための「豊かな時間」のように思うのです。
プラスチックや金属は、新築の時が一番きれいで、あとは古くなっていくだけかもしれません。でも木は、手をかけるほどに味わいが出てきます。30年、50年と時を重ねたとき、それはただの建材ではなく、家族と一緒に育った「宝物」のような存在になります。天気の良い週末、家族で窓枠を拭いたり、色を重ねたりする。そんな手入れを通じて家への愛情を深める心のゆとりも、一つの贅沢(ぜいたく)かもしれません。
4│未来へつなぐ、森の恵み
木製サッシを選ぶことは、この豊かな自然を次の世代へつなぐことにも通じます。木は、育つ時に空気をきれいにし、形を変えて家の一部になった後も、ずっと私たちの暮らしを見守ってくれます。
高い性能でエネルギーを大切に使いながら、最後には土へと還(かえ)ることができる木を使う。自分たちが心地よく過ごすための工夫が、そのまま茨城の森を守り、未来への贈り物になる。そんな、背伸びをしない等身大の家づくりを、私は大切にしたいと考えています。
5│心地よさを形にする、ささやかな工夫
基本を木製サッシに変えることは、設計士としても、より細やかな配慮が求められます。雨から家をどう守るか、どうすれば長く美しさを保てるか。そうした技術的な裏付けをしっかりと整えた上で、木製サッシならではの「圧倒的な安らぎ」を提案したい。
ただの「箱」を作るのではなく、日々の何気ない時間が豊かになる場所を形にすること。朝、窓を開ける瞬間の手触りや、夕暮れに窓枠が夕日に染まる美しさ。数字の裏付けを大切にしながら、五感ですべての豊かさを味わえる窓辺を、一つひとつ丁寧に設(しつら)えていければと思っています。
おわりに
窓枠は、家の外と中をつなぐ、大切なフィルターです。
冬の冷たい風を静かにさえぎり、春の柔らかな光だけを招き入れる。その場所に「本物の木」があるだけで、毎朝の景色はこれほどまでに優しくなります。木製サッシの温もりを通じて、あなたの毎日がより愛おしくなるお手伝いができれば、それ以上に嬉しいことはありません。
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