冬の暖かさと乾燥の付き合い方。

家族と家を守る湿度の魔法

2026年が始まり、1月20日には一年で最も寒さが極まる「大寒(だいかん)」を迎えました。今朝も厳しい冷え込みとなりましたが、これから家づくりをされる皆さんはどのような冬を想像されていますか。私が手がける家づくりでは、家中が足元からじんわり暖かい「床下エアコン」が大活躍しています。

今では9割以上の方が採用されるほど人気の設備ですが、この時期だからこそ、住む前にぜひ知っておいていただきたい大切なことがあります。それは、心地よい暖かさと引き換えにやってくる「冬の乾燥」との向き合い方です。健やかな毎日と、大切なお家のコンディションを長く守るための、スマートな空気の整え方をお伝えします。

 

1|暖かさと乾燥の意外な関係

冬でも薄着でリラックスでき、冷え知らずで過ごせる家。そんな理想を叶える床下エアコンは、廊下や脱衣所まで温度差がないため、暮らしのストレスを劇的に減らしてくれます。冷え切った床を恐れず、裸足で家中を歩き回れる開放感は、一度体験するともう戻れないほどの快適さです。

一方で、家全体が効率よく温まるからこそ、室内の湿度はどうしても下がりやすくなります。憧れのマイホームで暮らし始めてから「暖かいのは嬉しいけれど、朝起きた時に喉がカラカラする」「肌のカサつきが気になる」といったギャップに戸惑うことは少なくありません。長く愛せる住まいにするためには、この「暖かさ」と「湿度」をセットで考えることが、設計者としても非常に重要だと感じています。

 

2|素材と自分を潤す大切さ

私の家づくりでは、木のぬくもりを活かした無垢材や塗り壁といった自然素材を大切にしています。これらは湿気を吸ったり吐いたりする「調湿作用」という素晴らしい力を持っていますが、冬の極端な乾燥下では、素材自体の水分までもが空気に奪われてしまいます。素材が喉が渇いたとサインを出している状態です。

この状態を放置すると、デリケートな肌にトラブルが起きやすくなるだけでなく、こだわりの造作家具や床材がギュッと縮んで、隙間や割れの原因になってしまうこともあります。一生ものとして建てた家だからこそ、素材をいたわることは家の資産価値を守ることに直結します。自分自身の体をケアするのと同じように、お家にも適切な潤いを与えてあげましょう。建物も人も、歳月を重ねるほどに美しく健やかでいられる秘訣です。

 

3|絶対湿度という新常識

湿度は50%くらいがいいとよく言われますが、実はこの%(相対湿度)は温度によって数字が大きく変わってしまうため、正確な乾燥度合いを把握しにくい性質があります。そこで私が皆さんにぜひ知ってほしい指標が「絶対湿度」です。

これは、空気の中に実際にどれくらいの水分が重さ(グラム)として含まれているかを示す、より正確な数字です。心地よさの目安は、季節を問わずだいたい9グラムから11グラムの間。もしこれが7グラムを下回ると、空気が乾燥しすぎて、インフルエンザなどのウイルスが活発になってしまいます。自分や大切な家族の健康を守るための判断を、なんとなくではなく根拠ある数字で行う。これが、これからの時代のスマートな暮らしのスタンダードです。

 

4|数値で見える安心の作り方

今の空気の状態はどうかなといちいち不安になる必要はありません。忙しい毎日の中で役立つのが、2,000円前後で手に入る「みはりん坊ダブル」という測定器です。ネットで手軽に買えるこの小さなデバイスを一台置くだけで、家の絶対湿度がひと目で分かります。

実際に今、私のデスクで数値を確認してみると、室温24.4度に対して絶対湿度は10.4グラムでした。これなら喉も肌も心地よく、仕事や趣味の時間も快適に過ごせます。数値がパッと見えることで、加湿器をつけるタイミングや換気の判断も迷いません。勘に頼らないデータに基づいた管理は、単身の方でも、共働きのご夫婦でも、冬の暮らしを格段に楽で安心なものにしてくれます。

 

5|日常で潤いを補う工夫

もし測定器の数字を見て乾燥しているなと気づいたら、完璧を求めず、自分の生活ペースに合わせて楽しみながら潤いを補給しましょう。私が特におすすめしているのは洗濯物の室内干しです。床下エアコンの暖気は洗濯物を乾かすのにも最適で、家事の時短と加湿を一気に叶えてくれる、まさに一石二鳥のアイデアです。

また、お風呂上がりに浴室の扉を開けて、温かな湯気をリビングへお裾分けしてあげるのも、すぐにできる優れた方法です。最高の暖かさにほんの少しの潤いへの意識をプラスするだけで、冬の暮らしはもっと健康的で、家にも自分にも優しいものに変わります。新しい家で過ごす毎日が、潤いに満ちた温かなものになりますように。

建築工房「akitsu・秋津」

美は、日々の営みの中に。

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