資産を守る住宅性能の新常識。
わが家の防災、新常識。
大きな地震や台風のニュースを見るたび、「もし自分の家だったら…」と不安になることはありませんか? 今、災害に備える家づくりの常識が大きく変わろうとしています。
この記事では、熊本地震の教訓をもとに、「本当に安全な家」とは何かを解き明かします。これから家を建てる方も、今の住まいに関心がある方も、ぜひご家族の顔を思い浮かべながら読んでみてください。
1|熊本地震が教えたこと
2016年の熊本地震は、私たちに衝撃的な事実を突きつけました。それは、「新しい家だから大丈夫」という神話が崩れたことです。国の定めた新しい基準(2000年基準)で建てられた家の中にも、倒壊してしまったものがあったのです。
その原因の一つは、震度7クラスの激しい揺れが「2度」も襲ってきたこと。一度目で耐えた家もダメージが蓄積し、二度目で力尽きるケースがありました。もう一つは、家の「骨組みのバランス」です。壁の量は足りていても、1階と2階の柱の位置が揃っていないなど、バランスの悪い家は地震の力に耐えきれませんでした。
この経験から、「国の最低限のルールを守るだけでは不十分であり、もっと高いレベルの安全設計が必要だ」ということが、はっきりと分かったのです。
2|「耐震等級3」の落とし穴
「地震に強い家」の目安として「耐震等級3(最高ランク)」という言葉をよく耳にします。しかし、同じ「等級3」でも、その信頼性には大きな差があることをご存じでしょうか。これを健康診断に例えてみましょう。
一般的な「耐震等級3相当」の家で行われる簡易計算は、いわば「問診票と簡単なチェック」。壁の量などがルール通りかを確認しますが、家全体の詳細な力の掛かり方までは見切れません。
一方、より専門的な「許容応力度計算(きょようおうりょくどけいさん)」は「人間ドック」です。家の骨組み一本一本にかかる力を科学的に計算し、隅々まで安全性をチェックします。
熊本地震で無被害だった家の多くは、この「人間ドック」レベルの計算をしていました。「耐震等級3」という言葉だけでなく、「許容応力度計算をしているか」まで確認することが、真の安心へのカギなのです。
3|台風から家を守るには
地震と同様に警戒が必要なのが、気候変動により年々凶暴化している台風です。ここで注目すべきは、風への強さを示す「耐風等級」です。
最高レベルの「耐風等級2」は、500年に一度といわれる暴風でも倒壊せず、屋根や壁が吹き飛ばされにくい強さを示します。家にとって屋根は「傘」です。もし傘が壊れれば、家の中は水浸しになり、構造自体が腐食する原因になります。また、強風で飛散した瓦や外壁が、近隣の家や人を傷つける加害者になるリスクも見逃せません。
耐風等級を意識し、風の力に耐えうる構造計算をしておくことは、自分の資産を守るだけでなく、地域や周りの人の安全を守る「責任」でもあるのです。
4|国も動く「2025年」のルール改正
国も今、安全基準の大転換に乗り出しています。それが2025年の建築基準法改正です。
これまで一般的な木造住宅で認められていた「審査の省略(4号特例)」が見直され、より厳格なチェックが求められるようになります。これは国が公式に、「これまでの簡易な扱いでは、これからの巨大地震に備えるには不安が残る」と認めたことに他なりません。
しかし、この改正でもまだ、前述した「許容応力度計算」までは義務化されません。つまり、法律を守るだけでは、最高レベルの安全性には届かない可能性があるのです。法律の改正を待つまでもなく、国が目指す基準のさらに先を行く「根拠のある強さ」を自ら選ぶこと。それこそが、数十年先まで家族を守り抜く条件です。
5|未来のための賢い選択
災害はいつ起こるか分かりません。だからこそ、家族が毎日を過ごす「住まい」の安全性を高めることは、何よりも大切な備えです。
家のデザインやキッチン設備も素敵ですが、それらはすべて、頑丈な骨組みがあってこそ活きるもの。もしこれから家づくりを考えるなら、住宅会社の担当者にこう質問してみてください。
「この家は、全棟で『許容応力度計算』を実施していますか?」
この一言が、あなたと家族の未来を守るきっかけになります。高い住宅性能は、万が一の時に命と財産を守るだけでなく、日々の安心感という、家族への最も賢い「投資」になるはずです。
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