壁が生む陰影、静寂の美学。

珪藻土vs漆喰 塗り壁の選び方。

健康への関心が高まるいま、毎日過ごす家の「空気の質」を見直す方が増えています。そんな中、注目を集めているのが、自然素材の「塗り壁」です。

特に人気の高い「珪藻土(けいそうど)」と「漆喰(しっくい)」は、どちらも化学物質を使わず、人に優しい魅力的な壁材。しかし、似ているようで実は得意なことが異なります。

「結局、うちにはどっちが合うの?」そんな疑問に答えるため、この記事では5つのポイントで両者を徹底比較。あなたの暮らしにぴったりの「呼吸する壁」を見つけるお手伝いをします。

 

1|珪藻土と漆喰 ひと目で比較

まずは、両者の特徴を一覧で見てみましょう。それぞれの項目について、これから詳しく解説していきます。

2|空気の快適さで比較「調湿性」

塗り壁の最大の魅力である「調湿性」。室内の湿度を快適に保つ能力は、両者で少し異なります。

【珪藻土】パワフルに湿気を吸い、吐き出す

珪藻土は、植物プランクトンの化石からできており、「目に見えない無数の小さな穴」を持っています。この穴がスポンジのように機能し、湿気が多い時には水分を素早く吸収し、乾燥すると放出します。そのため、梅雨のジメジメ感や冬の乾燥を和らげる効果が非常に高く、一年を通して「カラッと快適な空気」を保ちたい空間に最適です。

【漆喰】ゆっくり呼吸し、穏やかに湿度を調整

漆喰も調湿機能を持っていますが、その働きは珪藻土に比べて緩やかです。急激な変化はありませんが、壁自体がゆっくりと呼吸するように湿度を調整し、安定した室内環境を保ちます。

調湿性を最優先するなら「珪藻土」が優位。寝室やリビングなど、過ごす時間が長い部屋におすすめです。

 

3|空気の清潔さで比較「空気清浄」

化学物質や気になるニオイへの対策も、健康な暮らしには欠かせません。

【珪藻土】ニオイの元をしっかり吸着

調湿性と同じく、スポンジのような無数の穴がタバコやペット、料理などの生活臭を吸着し、脱臭する効果に優れています。また、シックハウス症候群の原因となる有害な化学物質(VOC)も吸着するため、空気清浄効果が期待できます。

【漆喰】カビを寄せ付けない「アルカリ性」の壁

漆喰の主原料である「消石灰(しょうせっかい)」は、石灰岩から作られる自然素材ですが、強いアルカリ性の性質を持ちます。カビは酸性の環境を好むため、アルカリ性の漆喰の壁にはカビが非常に生えにくいという大きなメリットがあります。また、二酸化炭素を吸収しながら少しずつ硬化していく過程で、空気中の化学物質を分解するとも言われています。

ペットやタバコの臭いが気になるなら「珪藻土」。カビ対策を重視したい押し入れや水回りには「漆喰」が最適です。

 

4|質感と見た目で比較「デザイン」

壁はインテリアの印象を大きく左右します。それぞれの質感の違いを知り、理想の空間をイメージしましょう。

【珪藻土】ナチュラルで温かみのある空間に

粒子が大きく、表面はツヤのないザラリとした質感が特徴です。光を柔らかく反射するため、ナチュラルで落ち着いた、温かみのある雰囲気を演出します。ベージュや茶系など、自然になじむ色合い(アースカラー)も豊富です。

【漆喰】凛とした、上質でクリーンな空間に

粒子が細かく、表面は滑らかで、ツルリとした美しい仕上がりが魅力です。姫路城の白壁に代表されるように、清潔感と品格があり、和室はもちろん、無駄のないシンプルな(ミニマルな)空間にも美しく調和します。

カフェのような居心地の良い雰囲気なら「珪藻土」。ホテルライクな上質さを目指すなら「漆喰」が向いています。

 

5|強度と手入れで比較「実用性」

日々の暮らしの中での扱いやすさも重要なポイントです。

【珪藻土】柔らかく、自分で手入れしやすい

素材自体が柔らかいため、物をぶつけると表面がポロポロと崩れたり、傷がついたりしやすいのがデメリット。ただし、軽い汚れは消しゴムで落とせるほか、傷も水をスプレーして指でならすなど、ご自身で補修しやすい製品もあります。

【漆喰】硬く丈夫だが、ひび割れのリスクも

時間をかけて硬化するため、最終的な表面強度は非常に高くなります。しかし、その硬さゆえに建物の揺れなどで「ひび割れ」が生じやすいという側面も。補修には専門的な技術が必要です。施工そのものも左官職人の腕が仕上がりを大きく左右します。

お子様がいるご家庭などで傷が心配な場合は、腰から下の高さを板張りにするなどの工夫も一案。どちらもメリット・デメリットを理解した上で選びましょう。

 

6|暮らしに合う壁選び

珪藻土と漆喰、それぞれの特徴がお分かりいただけたでしょうか。どちらか一方を選ぶだけでなく、「場所によって使い分ける」というのも賢い選択です。

リビングや寝室には、調湿・消臭効果の高い「珪藻土」を。湿気がこもりやすい収納や北側の部屋には、防カビ効果の高い「漆喰」を。最近では、両者の長所を組み合わせたハイブリッドな塗り壁材も登場しています。

自然素材の壁を選ぶことは、単なる建材選びではありません。それは、自分や家族の健康を思いやり、より心地よいライフスタイルをデザインすることです。この記事を参考に、あなたの暮らしに最適な「呼吸する壁」を見つけてください。

建築工房『akitsu・秋津』

美は、日々の営みの中に。

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