故郷の森が、家族の盾になる。

国産材を選ぶことが、心豊かな未来への一票になる

家づくりにおいて最も大切なのは、住む人が健やかに、心地よく暮らせる空間であることです。しかし、私たちがその「心地よさ」を追求する場所は、決して周囲の環境から切り離された孤島ではありません。

地球温暖化やエネルギー問題が深刻化する現代において、住まいのあり方が地球環境にどのような影響を与えるのか。その問いに真摯に向き合うとき、浮かび上がる答えが「国産材」という選択です。

茨城や北関東の山々が育んだ木材を積極的に用いることで、住まう人の健康と、地球の未来の両方を守る。それは、単なる素材選びを超えた、持続可能な社会への「意志ある挑戦」なのです。

 

1│土地の記憶が、最高の心地よさを生む

国産材、特に日本の厳しい気候風土の中で育った杉や桧(ひのき)は、日本の家づくりにおいて最もバランスの取れた「最適解」と言える材料です。同じ空気を吸い、同じ雨に打たれて育った木材は、私たちの五感に柔らかな温もりを伝えるだけでなく、室内の湿度を自律的に調整する優れた機能を持っています。

この「呼吸する素材」に囲まれることで、夏はさらりと、冬はしっとりと落ち着く、健やかな住環境が実現します。さらに地元の木を選ぶことは、近くの山を健やかに保ち、巡り巡って地域経済を活性化させることにも繋がります。身近な山の木を使うことは、住む人の心と、地域社会を温かく結びつけることでもあるのです。

 

2│「どこで育ったか」という、目に見えないエネルギー

一方で、海外から海を越えて運ばれてくる輸入木材を使用することには、見落とされがちなリスクがあります。それは、輸送に伴う莫大なエネルギー消費とCO2排出です。

例えば、欧州から木材を運ぶ場合と、地元の山の木を使う場合を比較してみましょう。輸送距離が短い地域産の木材を使用すれば、欧州産に比べて約22分の1という極めて少ないエネルギーで資材を調達できることが分かっています。「どこで育ったか」という視点は、食の安全と同じように、住まいの「環境負荷」を考える上で、これからの時代には欠かせない指標なのです。

 

3│我が家を「都市の森林」にする喜び

木は成長の過程で太陽の光をたっぷり浴び、大気中のCO2を吸収して、それを炭素として自らの体内に貯じきり(固定化)ます。つまり、木造住宅を建てることは、街の中に「都市の森林」を築くことと同義なのです。

実際に、一軒の木造住宅が固定化できるCO2量は、樹齢50年の杉の木およそ70本分が吸収する量に相当します。家が建ち続ける限り、その炭素は封じ込められ、温暖化の抑制に貢献し続けます。適切なサイクルで地元の木を伐り、使い、また植える。この持続可能な循環の輪に加わることが、設計士としての私の誇りでもあります。

 

4│素材の「生い立ち」まで含めた真のエコ

近年、太陽光発電などを備えた「エコ住宅」として鉄骨構造の家も普及していますが、その「真の環境性能」を考えるとき、製造過程にまで目を向ける必要があります。鉄やコンクリートといった資材は、製造時に膨大な熱エネルギーを必要とし、多量のCO2を排出します。

鉄骨プレハブ住宅の製造時のCO2排出量は、木造住宅の約3倍にものぼるとされています。家が建ってからの省エネ性能(GX ZEH+)はもちろん大切ですが、家ができるまでの「素材の生い立ち」を含めて評価して初めて、本当の意味での環境配慮と言えるのではないでしょうか。木は、その製造段階から地球に優しい、稀有な素材なのです。

 

5│持続可能な未来を、茨城の空の下で

私たちは、住宅としての高い性能を追求すると同時に、国産材の利用率を極限まで高め、地域林業との連携を深めています。近場の山で育った「山溝杉」などを用いること。それは、日本の山を荒廃から守り、土砂災害を防ぎ、豊かな水源を次世代へと引き継ぐ活動でもあります。

国産材で家を建てる。それは、家族の幸せな時間を積み重ねる器を作ると同時に、この美しい風景を守る一票を投じることでもあります。住む人が誇りを持てる家、そして地球が喜ぶ家。そんな持続可能な未来を、皆さんと共に築いていきたいと願っています。

 

おわりに

国産材の床に触れ、その香りに包まれるとき、私たちは知らず知らずのうちに、この土地の自然と繋がっています。それは、何十年という歳月をかけて山が育ててくれた「安心」という名の贈り物です。

一人の設計士として、私はこれからも地元の木に敬意を払い、住む人と地球の両方が笑顔になれる住まいを、丁寧に編み続けていきたいと考えています。

建築工房「akitsu・秋津」

美は、日々の営みの中に。