本質を識る、単位の美学。
メートルと尺貫法を知ろう。
世界中で使われている長さの単位「メートル」。でも、日本の大工さんは今でも「寸(すん)」や「尺(しゃく)」という昔ながらの単位を使っています。なぜだかご存知ですか?
この記事では、おなじみの「メートル」と、日本の暮らしから生まれた「尺貫法(しゃっかんほう)」、それぞれの面白い特徴をくらべて見ていきましょう。
1│世界でひとつの長さ、メートル
メートルは、約200年前にフランスで生まれました。「世界中どこでも、誰が使っても同じ長さにしよう」という考えが元になっています。もともとは地球の大きさを基準にして作られ、今では光の速さを元にした、とても正確なものさしです。
科学の実験や、精密な機械の設計図など、世界共通の「ちゃんとした長さ」が必要な場面で大活躍します。
ただ、あまりにきっちりしているせいか、私たちの普段の感覚とは少しずれることも。「この部屋は2.4mの高さです」と言われるより、「一升瓶を縦に6本くらい積んだ高さだよ」と言われた方が、何となくイメージしやすかったりしませんか?
2│体から生まれた長さ、尺貫法
尺貫法は、昔の日本人が使っていた、とてもユニークな単位です。その原点は、なんと「自分の体」。例えば、親指の幅を「一寸(いっすん)」、両手を広げた長さを「一尋(ひとひろ)」というように、自分の体の一部をものさしにしていました。
基準となる「一尺」は、約30.3cm。ちょうど、足の大きさより少し長いくらいですね。
この単位のいいところは、なんといっても分かりやすさ。今でも建築現場では、大工さんが「サンジャク(三尺)の板とって」なんて声をかけ合っています。これは、自分の体の感覚で長さを覚えているから。まさに、暮らしの知恵がつまった単位なのです。
3│今も家づくりで活躍する尺貫法
「立って半畳、寝て一畳」という言葉を聞いたことはありますか?人が暮らすのにちょうどいい広さを表した言葉ですが、これも尺貫法から来ています。
日本の畳は、基本的に「三尺(約91cm)× 六尺(約182cm)」というサイズが基準になっています。この「三尺(91cm)」という長さは、日本の家づくりの基本サイズとして、柱の間隔や壁の幅を決めるのに今でも使われています。
木材や壁の材料もこのサイズに合わせて作られていることが多いので、ムダが出にくく、家をスムーズに建てられるという利点があります。尺貫法は、日本の家づくりにぴったりの、賢いルールだったのですね。
4│家づくりの基本単位えらび
最近では、暮らしの変化に合わせて、1メートル(100cm)を基本のサイズとする「メーターモジュール」という考え方で建てられる家も増えてきました。
これは、尺貫法を基本にした家(尺モジュール)よりも、廊下や階段、お手洗いのスペースが少し広くなるのが特徴です。車いすを使う方や、ゆったりした空間が好きな方には嬉しいポイントですね。
もちろん、昔ながらの尺モジュールにも、畳やふすま、日本の家具がぴったり収まるという良い点があります。どちらが良いというわけではなく、自分たちの暮らしにどちらが合うかな、と考えてみることが大切です。
5│二つの単位と仲良くなろう
メートルは、世界中の人と数字で話せる「共通語」。そして尺貫法は、日本の暮らしや文化に寄り添ってきた「暮らしの言葉」と言えるかもしれません。
尺貫法が今も大切にされているのは、それが昔の人の感覚に合い、とても使いやすかったからです。
この二つの単位の違いを知ると、建物の柱の間隔や部屋の広さなど、身の回りのものを見る目が少し変わって、面白くなるかもしれませんね。
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